管理人の覚書、日々思うことなど。

ありふれた愛の幻滅【山ヒバ習作】
山ヒバ習作を置いておきます。
セクシャルバイオレットの続きです。行き当たりばったりと思いつきで書いてます。
イタリア裏社会では同性愛厳禁だからドン・ボンゴレには秘密っていう話です。
ほんのり続くかも?



以下作品とは関係ない雑談。
今週のWJまだ読んでないんですけど、リボーンはしばらくイタリア戦かな。
十年後ボスは女王さま受けっぷりに磨きが掛かっている様子なので、非常にたのしみです。
わたしは原作での投下がなくても二人が幸せだったり不幸だったりするのを頭の中で想像するだけでわりと楽しいので、周りの喜夜さんや山ヒバさんが「いい加減原作に喜夜(山ヒバ)が出てこないと干上がる…」とかおっしゃっててもきょとんとしてしまいます。
元々わたし、原作では放置プレイ(どころか酷い扱い受けてる)CPの出身なもので、原作で萌え投下されないのがデフォルトだったんですよね…考えてみたらH×Hでレオクラ書いてたけど、ヨークシン編以来二人とも出てきてないし、テニプリのタカ不二も黄金ペアに次ぐ青学ダブルスだったはずなのに試合しないし(それは不二がシングルスで二番目に強い人だったから)、藍桃は初夜翌朝に旦那が血祭りになって以来常に酷い扱いだったし、喜夜は…。
そんな状態でも、一つのジャンルで一年以上活動できるんですよねー。

水を与えられなくても生きていくことを覚えた荒野のサボテン、っていうか雑草?
むしろあんまり養分が多すぎると根腐れ(※)を起こします、みたいな?
※原作でやってくれるなら別にわたしが書かなくてもいいじゃん、となる。

タカ不二も藍桃も喜夜も、そんなにサークルが多いCPじゃなかったので(タカ不二は二回くらいオンリーがあったけど、30〜50SP規模だった)、やってる人はみんな顔見知り、って感じで居心地がいいんですが、山ヒバ山を書いてると、豪華客船の浮かんだ大海原に筏で漕ぎ出したような心許無さを感じます(そんな筏サイトですが精一杯生きてます)。


 ブランチを取ってから、仕事の指示をもらいにツナに逢いに行った。別れ際、ツナが、あっと声を上げた。
「どうした?ツナ」
 なにか言い忘れがあったのかと思って、ツナに目線を合わせる。覗き込んだ先のやわらかい茶色をした瞳孔が、微笑んで細くなった。
「いや……大したことじゃないよ」
「なんだよ、気になるだろ」
 ツナは、あのね、勘違いかもしれないけど、と前置きして言った。
「この前会ったときヒバリさんがね、香水つけてて……山本のつけてるのに似た香りだったんだ」
 どこかで嗅いだことある匂いだな〜って思ったんだけど、と言って、ツナは柔らかく微笑んだ。
「麝香系の匂いだよね、それ。ヒバリさんも同じのつけてるのかな?」
 今朝雲雀に言われたことを思い出して、赤くなったり青くなったりした。
 まさか先一昨日からアパートメントに雲雀が転がり込んでいて、毎晩一緒に寝てます、なんて、死んでも言えない。イタリアの名誉ある男の社会では、同性愛厳禁だから、言ったら死ぬ、というのが正しいかもしれない。
 ツナに変な目で見られるのは、死ぬより辛い。
 だから絶対ツナには言うなよ――いつだったか雲雀にそう言ったのは、冗談半分だったのだが、もう半分は本気だ。
 雲雀は肩を竦めると、窓の外を眺めながら言った。窓際にはベットが置いてあって、雲雀は大抵そこで寛いでいた。天気のいい日で、地中海の青い空が眩しい。
「そんなの請け負えないよ、明日会ったら言うかもしれないし、次会うのが三年後で、君とは手を切ってるかもしれないしね」
「おまえさ……」
「僕と寝てるくせに沢田に軽蔑されたくないなんて、虫が良すぎるんだよ、君は」
 雲雀は口の端を吊り上げて、嘲弄するように笑った。
 端正な横顔を、油断なく観察する。雲雀は傷付いただろうか、と考え、でもきっと傷付いてはいないのだと思う。
「……まあいい、そういうところが面白くてすきだよ。訪れない未知を恐れて、びくびくしてる顔も」
 雲雀はからかうように軽く、キスをしてきた。何度か触れ合うだけのものを繰り返して、段々もつれ合っていく。触れ合う舌の熱い柔らかさに心地よさを感じながら、思い描いていた偶像との違いに、気が遠くなる。雲雀は抱きつくと、山本ごとゆっくりと、後ろに倒れた。脚の低いベットは白くて四角くて、太陽の匂いがした。雲雀に似つかわしくない明るい窓辺は、彼の体の陰翳を、欲望を、くっきりと浮かび上がらせた。
「……ねぇ」
「なんだよ」
 口移しで彼を追うのに夢中になっていた山本は、不意に行為を中断されて、顔を顰めた。雲雀は額をくっつけると、冗談のように言った。雲雀は変わった。よく笑うようになった。挑発の手段としての微笑み。
「僕がここの窓から、そこの八百屋に手を振っても、君と見分けがつかないと思わない?」
 最近、跳ね馬に言われるんだ、僕と君は似ているって。
 人事のように雲雀が囁いたので、山本は彼の耳元に吹き込んだ。
「………あそこの親父、いまだに俺を中国人だと思い込んでるぜ」
「君がいつも、みすぼらしい格好をしてるからだろ」
 雲雀はそう答えて、蝶を食む蜘蛛のように足を折り、絡めた。確かに、仕事に行くときはかなり身なりに気を遣うが、普段着は安物のTシャツとジーパンなので、そこら辺をふらふらしていると獄寺に怒られる。マフィアのくせにみっともない、十代目のお顔に泥を塗る気かと。そういう獄寺と同意見らしい雲雀も、この部屋にいるときは、そこら辺にあったTシャツやパーカーを適当に着て、自堕落に過ごしている。誰よりも郷土愛が強くて、日本らしい生活を守っているくせに、守っているせいか、彼は行く先々で、必ず中国人か韓国人に間違われた。不服そうな眉。寡黙な唇。まっすぐなまなざし。彼は絹の道の終着駅から、鈍行でやってきたのだ。
 山本は洗いざらしのシャツ越しに感じる、その鍛えられた胸板や、白くて太い首の感触に安心する。無骨で、隙の無い身体美。小ぶりでよく手に馴染んだ刃物のように、力任せに扱っても、彼は決して崩れなかった。山本はそれを歓びながら、どこかで、一緒に破滅していく甘美な夢を捨てきれずにいる。

 ツナを狙った殺し屋を返り討ちにして顎に傷を負ってから、山本は野球を捨てて、イタリアのファミリーに合流した。十九のときだった。二十の年に、雲雀が目の前に現れた。動揺した。山本が成長するように、彼が大人になっていたから。渡米してしばらく、並盛を離れていた山本の中では、雲雀は中学生のままだったのに。
 山本は中学生時代の雲雀の写真を持っていない。見たこともない。金輪際目にすることのない、会うこともない客観的な雲雀恭弥の不在が、彼の憧れをうつくしくはかないまま保っていた。
 そんな山本の誇大幻想に、無意識に気付いていたのだろう、雲雀は挑発的だった。あの形のいい肩で、脚で、唇で、山本を打ちのめそうと、襲い掛かってきた。うっとりした。なあひばり、お前はなんで野球をするために生まれてこなかったんだ?にこにこ笑って雲雀を抱きすくめると、釣り上げたばかりの魚のように暴れまわったが、そのうち観念して大人しくなった。なあひばり、俺はなんで野球をするために生まれてこなかったの?
 雲雀への気持ちは、中学生のときの憧れと感謝の延長線にあるはずだったのに、彼の潤んだ粘膜に触れ、性器を突っ込むたび、彼は実は、雲雀恭弥とは全然別の人間で、性格がそっくりで正反対の双子で、当の風紀委員長は今でも、あの応接室のソファで眠っているのではないかと思う。誰にも触れられないまま。夢中になればなるほど、あの頃の雲雀との違いに愕然とする。それはありふれた愛の幻滅だった。要は惚れてるのだ、結局。

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